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つららの戯言

つららの戯言

見てみたら 髑髏城in新国立

髑髏城の七人 新国立劇場ヴァージョン

 2階センター最前、右、右隅、左、左隅、2列目、ほぼ中央 と いろいろな角度から見つづけた今回の「髑髏城の七人」新国立ヴァージョン
 見るたびによくなりつづける芝居を見ならがらも思い悩む日々。

 舞台全体として今回素晴らしかったのは、音響、照明、セット。
まずは音響。いつもならハードロック基調の新感線。今回は和太鼓を用いてより重厚で『和の響き』を重点においている。しかも「アカドクロ」という1曲を様々なアレンジでいろんな場面で多様している。いつものような派手さはないが、ストーリー重視の今回の芝居にはとても合っていたように思われる。

 そして照明。これは2階席の時に堪能。髑髏城内部のステンドグラスのような文様や、関東、イギリス地図の床照明。そして無界屋の門の上に浮かび上がる髑髏の月と、今回はホントに美しい照明ばかりだった。天魔王にあたる髑髏のスポット。かっこいいぃい
 そしてセット。これはたぶんびわ湖、新国立という独特の長い奥行きを持った劇場だからこそのセット。演出のいのうえさんは「(髑髏の前に上演していた)透明人間の蒸気に負けないような、奥行きを生かした演出をしたい」と話していた。
 髑髏の浮かぶ月夜の中、蘭兵衛が髑髏城に向かう場面、そして長煙管をもって現れる場面はとても美しい。奥行き&遠近法を用いて見えない無界の里の風景がみえるようだ。最後に捨之助、沙霧が去っていく場面もあの長い奥行きがあるからこそ、見せることができるわけで。

 そして役者たち

 まずは梶原善。これほど新感線に馴染むとは正直驚いた。それにまだまだ動けていることも。百人切りの場面、捨之助が敵をなぎ倒している間、刀を磨ぎならが捨之助の動きを確認し、適切なところに刀を差し出す。殺陣は動きがきまっているがやっているのはロボットじゃなくて人間。捨之助が毎回同じ場所に使っていた刀を出すわけじゃない。微妙に違うそれを受け取りながら新しい刀を差し出す。捨之助は贋鉄斎のことなど見もせずに刀を回すから、受けるほうは大変だ。
百人切りの凄さは善ちゃんの努力があってこそ。
 山本さん。残虐非道な声は相変わらず。いのししトークでかわいいさアピールでその裏側の残虐さが鮮やかになる。
 佐藤さん。逆上する家康になると台詞のとおりが悪い。雰囲気は伝わるけれどね。狸オヤジの腹黒さは相変わらず。
 仁美さん。最初よりより可愛くて、愛すべき沙霧になりました。どこかのHPで沙霧と捨之助の関係は「紅の豚」のようだと書いている人がいました。お互いに尊敬し合い、助けあい、認め合いほのかに恋心なんぞも抱いている関係。私もそう感じました。「花がない」なんて書いたびわ湖での感想でしたが、演技もより表情が豊かになり感情たっぷりです。私は好きなのは彼女が涙を腕でぐっしっと拭うところ。潔くて可愛くて捨之助が命をかけても守りたいと思う女性。最後に捨之助にじゃれつきながら去っていく姿は新感線のラストとしては1、2を争う演出だと思います。
 水野さん。前から2列目だから見れた彼女の表情。天魔王の手に堕ちた後、捨之助を切り捨てる場面。刀を抱きながら、亡き大殿に思いをはせる彼女は寂しそうな色っぽい表情。声もそのときばかりは女に戻っている。ただそれはテレビサイズの演技。果たして2階まである新国立劇場で伝わることができるのか。
 坂井さん。声大丈夫か??大阪までには元に戻るんだろうね。色気の欠片もない太夫にがっかり。太夫の時の色気とりんどうに戻ったときの男気の差が面白いだろうに。どちらも中途半端でもったいない。
 サンゴがなんだか可愛いよねぇ。7年前はなんとも思わなかったのに。最後には1人でちゃんと敵も倒せたし。

 そして古田新太

 GW中、ずっと考えていた。「勢いが落ちた」っていうこと。29日の立ち回り、演技を見ていると明らかに役者として技量が落ちていると認めざるを得なかった。びわ湖でみたときは「捨之助」を演じている彼を見ているだけで幸せだった。でも落ち着いてみてみると彼の衰えが目に付いて、モヤモヤという気持ちになり
ああいう日記を書いたのだ。
 でも、でもね、4.5日の彼は全然違うものだった。なんだったんだ??29日はと思うほど。今度の捨之助は7年前のものとはまったく別物。7年前の捨之助はスーパーマン。優しくて、強くて、モテモテで、「超人」なんだ。でも今回の捨之助は違う。彼の優しさは、自分の傷ついた過去から滲み出くるもので、彼の強さは、過去を乗り越えようとふんばっている強さ。
 昔みたいな流れるような殺陣ができないのは仕方ない。だって捨之助じゃないけれどあれから7年も経っているのだから。でもね、今回の捨之助は負けそうだけれども、辛そうだけれども、天魔王という過去の怨霊と闘うの。そうじゃないと自分は前に進めないから。「浮世の義理を三途の川に捨之助」というために。

 今回は殺陣のシーンが多いのだが、天魔王と捨之助の殺陣は明らかに違うことがわかる。

 捨之助は「地」の信長荒々しく、感情的で、動きに無駄もある。そして一緒に闘うヤツのことをよく見ている。それは天が落ちた後の彼の8年間を感じさせる。生きていくために闘ってきた彼の8年間を。いつもの古田の殺陣だと、ターンが多い。流れや見た目を重視した感じの。でも今度の捨之助場合は飛び上がったり、体全体で敵をなぎ払う場面が多い。ほんとに珍しいこと。
 それに反して天魔王は上に立つ、武将の殺陣。冷静で、無駄がなく、甘さがない。コンパクトに腕と体の回転だけでなぎ払い、切り捨てていく。
 蘭兵衛もそう。ただ蘭兵衛が哀れなのは、必ず天魔王の半歩前に立ち、いつでも攻撃態勢でいること。天魔王とともに戦い、天下を望まんとする姿勢。なのに天魔王はそんな蘭兵衛を裏切る。大殿と共に死ねなかった悲しみ、そしてまた裏切られた悲しみ・・・。なんともいたたまれない蘭丸の人生。
 それを同時に演じている古田新太という役者を「勢いが落ちた」なんていったら怒られますよね。

 まだまだ変わっていくんだろうなぁ。大阪、そして東京と・・・・。

 古ちゃんの太ももにふらふらしている場合じゃないよね。ちゃんと見ないと。見つづけないと。

 得点 6.5点/10点満点 (まだまだこんなもんじゃないよね?)


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